文字サイズ 標準 | 日本語 | English |
  • ホーム
  • 小児総合医療センターの特徴的な取組
  • 周産期医療

周産期医療 〜総合周産期母子医療センター(新生児部門)〜

新生児循環器科疾患

内臓錯位(右側相同、左側相同)

 本来左右非対称である臓器が、先天的に左右対称に位置する異常で、臓器の左右が完全に逆転した内臓逆位とは異なり、大多数に複雑心疾患を合併します。左右とも本来右側にある臓器で占められる場合(対称肝、両側3葉肺、無脾)を右側相同、左右とも本来左側にある臓器で占められる場合(両側2葉肺、多脾、下大静脈欠損)を左側相同と言います。右側相同には左側下大静脈、共通房室弁、房室中隔欠損、肺動脈弁狭窄・閉鎖、総肺静脈還流異常、頻脈性不整脈が、左側相同には下大静脈欠損・奇静脈接合、大動脈縮窄、徐脈性不整脈、肺高血圧などが多く認められます。胎児心エコーで、胃泡、下大静脈の位置異常から診断されます。

エプスタイン病

 三尖弁が右心室心筋から発生する過程に異常があり、三尖弁の形成が不十分な疾患で、高度の三尖弁逆流、右心房拡大や右心室の心筋の異常(右房化右室)を生じます。心房中隔欠損や肺動脈弁狭窄・閉鎖もよく合併します。胎児心エコーで三尖弁の形態、逆流の程度、右心室の形態を見て診断します。胎児期に診断されたエプスタイン病は、早期に心不全、チアノーゼ、不整脈などを発症することが多いとされています。右房化右室の割合が大きく、右心室が肺へ血液を送り出す機能が期待できない場合は、最終的にフォンタン手術(単心室循環への修復手術)が必要になります。

房室中隔欠損

 心臓の中心部にある心房中隔、房室弁(三尖弁、僧帽弁)、心室中隔を構成する房室中隔に欠損(穴)がある疾患で、完全型と部分型があります。欠損は大きく、出生後肺血流過多になり、房室弁の逆流も伴って心不全や肺高血圧になるため、手術が必要です。胎児心エコーで心臓の中央に欠損があることから診断されますが、胎児の向きによっては欠損の描出が難しいことがあります。また内臓錯位や、大動脈縮窄を合併することがしばしばあります。ダウン症候群に特徴的な疾患です。

左心低形成症候群

 僧帽弁狭窄または閉鎖、大動脈弁狭窄または閉鎖、左心室低形成、大動脈縮窄の組み合わせをもつ疾患です。左心室が小さく大動脈も細いため、左心室からだけでは体への血流が保てず、出生後も胎児期の卵円孔による左心房→右心房、動脈管による肺動脈→大動脈の血流が必須です。頻度は少ないですが、左心室や大動脈の異常が明らかなので、比較的胎児心エコーで診断されやすい疾患です。出生後にすぐにプロスタグランジン静注を開始し、動脈管の閉鎖を防ぐ必要があります。出生後卵円孔が狭くなった場合は、心臓カテーテル治療で卵円孔を拡大します。肺血流、体血流とも右心室から供給される循環のため、肺血流、体血流のバランスが不安定で、出生後容易に心不全になるため、人工呼吸管理になることが多いです。最終的にフォンタン手術が必要になります。

純型肺動脈閉鎖

 肺動脈弁閉鎖によって右心室から肺動脈への血流が保てず、胎児期の卵円孔による右心房→左心房、動脈管による大動脈→肺動脈の血流が必須です。出生後動脈管の閉鎖を防ぐため、すぐにプロスタグランジン静注を開始します。胎児心エコーで、小さな右心室と、右心室から肺動脈への血流が確認できない所見から診断されます。しばしば右心室の心筋から直接冠動脈へ血液が流入する所見が見られます。右心室が小さい場合、肺へ血液を送り出す機能が期待できないため、最終的にフォンタン手術が必要になります。

ファロー四徴

 大動脈弁の下に大きな心室中隔欠損があり、大動脈が左右の心室にまたがり(騎乗)、肺動脈狭窄を特徴とする疾患です。出生後、肺動脈狭窄による肺血流低下により、チアノーゼが出現します。特徴的な合併症として、泣いた後などチアノーゼが急に増強する無酸素発作があり、発作を起こした場合は早期の手術が必要となります。胎児心エコーで、心室中隔欠損と、通常より小さい肺動脈弁や細い肺動脈から診断されます。ダウン症候群や22q11.2欠失症候群などの染色体異常もしばしば認められます。

完全大血管転位

 右心室から大動脈、左心室から肺動脈が出る疾患で、動脈血と静脈血が完全に分離しているため、出生後も胎生期の卵円孔、動脈管を維持し、動静脈血が混合することが必須です。胎児心エコーで心室と大血管の位置関係を同定することにより診断されます。出生後動脈管の閉鎖を防ぐため、すぐにプロスタグランジン静注を開始します。心室中隔欠損を伴わないタイプでは、出生後早期に卵円孔を拡大する心臓カテーテル治療を行うことがあり、その後早期に大血管スイッチ手術を行います。心室中隔欠損を合併するタイプでは肺血流過多となり心不全に、心室中隔欠損と肺動脈狭窄を合併するタイプでは肺血流が減少してチアノーゼを呈します。

両大血管右室起始

 大動脈、肺動脈が主に右心室から出る疾患で、心室中隔欠損を伴います。ファロー四徴のように、大動脈(または肺動脈)が左右の心室に騎乗します。ファロー四徴より右心室に騎乗する割合が大きいことが多いです。胎児心エコーで心室と大血管の位置関係を同定することにより診断されます。肺動脈狭窄を伴わないタイプと伴うタイプ場合があり、完全大血管転位のように心不全やチアノーゼを呈します。内臓錯位でもよく認められます。左右心室のどちらかが小さく、体や肺へ血液を送り出す機能が期待できない場合は、最終的にフォンタン手術が必要になります。

大動脈縮窄

 大動脈弓(上半身から下半身へ向かう部分)の一部が狭窄している疾患です。下半身の血流が不十分になり、腹部臓器の機能が低下する可能性や、左心室が圧負荷に耐え切れず、心機能が低下する可能性があります。下半身の血流を確保するために、プロスタグランジン静注で動脈管を維持することもあります。心室中隔欠損を合併すると、肺血流が増加し、さらに体への血流が低下するため、出生後早期から心不全になります。他の心疾患に合併することも多く、胎児心エコーで心疾患を診断する際には、必ず大動脈弓の狭窄がないかを確認します。

総肺静脈還流異常

 通常左心房に流入する肺静脈が、大静脈や右心房へ流入する疾患で、心房中隔欠損を伴います。肺血流が過多になり心不全を、動静脈血が混合するためチアノーゼをきたします。出生後早期に手術が必要な疾患ですが、胎児心エコーでも診断が難しく、左右の肺静脈が左心房へ流入していることを1本ずつ慎重に確認します。内臓錯位の一つである右側相同に高頻度に合併します。

不整脈

 胎児期に問題になる不整脈として、心房粗動、上室頻拍などの頻脈性不整脈や、完全房室ブロックなどの徐脈性不整脈があります。胎児心エコーで心房、心室壁の動きを観察することで、出生前に不整脈の種類を診断できます。不整脈の程度により、母体に抗不整脈薬を投与して、胎児治療を行うことがあります。不整脈の持続により心不全になり、全身がむくむ胎児水腫まで悪化する場合は、帝王切開で早期に娩出し、生後すぐに抗不整脈薬や、ペースメーカーによる治療が必要になります。