
児童・思春期精神科 副院長 柴田 滋文
概要
児童思春期精神医学が対象とする疾患群は多岐に渡ります。
幼少時から症状が顕在化する、自閉症や注意欠損多動障害を代表とする発達障害がその対象となることは勿論ですが、統合失調症や気分障害、不安障害や摂食障害、さらには物質使用障害など、認知症を除く成人の精神疾患のその殆どが思春期を好発期とすることはよく知られています。
我々は旧都立梅ヶ丘病院の系譜を受け継ぐ診療科です。
発達障害へ対する医療はこれまで通り柱であり続けますが、生涯にわたり人間の様々な機能に大きな影響を及ぼす精神疾患の早期発見、早期治療をその使命をする思春期精神医療をもう一つの柱として育てていきます。
我々は精神科病床202床、常勤医師定数14名と児童思春期精神科をしては日本一の規模を誇り、さらに独自の後期研修医プログラムを持つ大きな診療科です。
入院治療に関しては、関東一円から来院する重症患者へ対するセンター機能を有すると同時に、東京都西部における地域医療の基幹病院としての機能も併せ持っています。7つある病棟は、急性期、亜急性〜慢性期と機能別に分かれており、更に学童病棟、強度行動障害病棟とそれぞれの特徴に合わせた病棟も配備しています。また診療においては、医師、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカー、作業療法士から構成されるチーム医療を心がけると共に、保育士や院内学級とも有機的連動を図っています。
また、外来診療においては、年間新来患者数1000名に迫る中、年齢や病態に合わせてデイケアプログラムも複数有しています。
後期研修医プログラムでは3年間にわたる専門性の高い医学教育を提供しており、厳しい選抜を経て全国から集った、精神保健指定医から小児科専門医取得者まで様々なバックグランドを持つ若手医師15名が、日々研鑽に励んでいます。
後期研修医プログラムについて
診療内容
主な対象疾患
かかりつけ医療機関で以下のような診断、疑いを指摘された方が多く受診されています。
なお、睡眠障害のうちナルコレプシーは対象外となります。
対象年齢
外来初診は17歳以下の方、入院は入院年度末に18歳以下の方
外来診療
子どものこころの問題には、主に家族、学校を中心とした環境要因が大きく関与します。われわれは、家族、かかりつけ医療機関のみならず、地域の子ども家庭支援センターや児童相談所、児童福祉施設、学校、教育相談機関などと密に連携を取りながら治療を進めて参ります。
外来治療のオプションとして、幼児学童デイケアや思春期デイケアといった当院内の医療資源をご紹介させていただくこともできます。
なお残念ながら、外来での心理士による心理カウンセリングは原則的に承っておりません。
外来診療の期間は、初診後より原則20歳を迎える年度内までとなります。20歳を超えても引き続き医療機関への受診が必要な方や、上記の入院対象年齢から外れる18歳以上の患者さまで入院治療が必要になる可能性が高い方には、適宜、成人向け医療機関への転医をお願いしております。また、急性期の方や重症度の高い方の受け入れを強化するために、状態の安定している患者さまには地域の医療機関をご紹介させていただくことがあります。ご理解賜りますようお願い申し上げます。
セカンドオピニオン
ご希望の方はセカンドオピニオン外来についてをご覧ください。
入院診療
当科の病床は、5階(丘のフロア)と6階(森のフロア)にまたがる7病棟、計202床となります。全入院病棟は、5階の『丘の広場』と呼ばれる屋上庭園を吹き抜けとして取り囲む形で配置されており、明るい雰囲気に包まれています。各々の病棟は対象とする子どもたちの年齢(思春期・学童)、性別、疾患、病期(急性期・亜急性期)などにより機能が分けられています。
入院診療には医師、看護師、心理士、精神保健福祉士、作業療法士、保育士、薬剤師、栄養士などからなる多職種チームで臨んでいます。各病棟に専属の医師、看護師、心理士、精神保健福祉士が配属されており、入院中の主治医や担当心理士、精神保健福祉士は外来の担当者と異なることが多くなります。
入院期間はお子さんによりさまざまですが、多くのケースが月単位になります。治療の段階により、病棟では以下のような「日課」にそって集団生活を送ります。
午前 |
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午後 |
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7:00 |
起床 |
13:30 |
病棟プログラム |
7:30 |
朝食・朝薬 |
15:00 |
おやつ |
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検温 |
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患者ミーティング |
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患者ミーティング |
18:00 |
夕食・夕薬 |
10:00 |
病棟プログラム |
20:00 |
就寝前薬 |
12:00 |
昼食・昼薬 |
21:00 |
就寝 |
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月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
日 |
午前 |
病棟 プログラム |
散歩 |
作業療法
グループ |
体育 |
創作活動 |
自由 |
自由 |
午後 |
入浴 |
グループ ミーティング |
入浴 |
私物整理 |
入浴 |
自由 |
自由 |
それぞれのお子さんの治療に応じて、作業療法(こころ入院リハビリテーション)を導入することも可能です。また、院内には義務教育年齢のお子さんのために東京都立武蔵台学園の病弱教育部門(分教室)が設置されており、通常の学校・学級で適応が難しく入院治療となったお子さんへの教育支援体制も整備されています。
さらに、疾患に合わせ以下のような専門プログラムを用意しています。
自閉スペクトラム症(ASD):ソーシャルスキルトレーニング ( SST ) 、ご家族さま向け
TTAP ( TEACCH Transition Assessment Profile )
摂食障害:グループ治療プログラム「アプリコットの会(摂食障害のご本人・ご家族向け集団療法)」( Family Based Therapy )
なお、お子さんの治療の段階に応じて、面会や電話、外出・外泊などを一定期間お控えいただくことがあります。
さらに詳細な情報をご希望の方は、当院初診後、主治医にご相談ください。