その中で疾患数の多いものは、成長・思春期・性の分化の異常、糖尿病、くる病等のカルシウム代謝異常、甲状腺・副腎のホルモン異常、肥満・高脂血症等の小児期成人病、先天代謝異常症等です。
真に患者およびその家族を大切にする日常臨床、国内第一線での治療レベルを目標としており、外来は延べ7〜8名のスタッフで診療しています。
次のような訴えのある患者さんを診療しています。
ここでは、外来にくる患者さんのなかで、比較的頻度の多い成長の心配(背の伸びがわるいなど) 、思春期の発達の心配(乳腺発達が早い、遅いなど) 、性分化の心配(外性器の形が気になる、停留精巣がある、思春期の体の発達が生じないなど) を取り上げて説明しました。
低身長がご心配のご家族、本人はたくさんいらっしゃいます。我々はこうした方の不安を小さくすること、何か身長の伸びない原因がないか確認することをしております。
外来に低身長を主訴にして来院する児としては、家族性低身長、体質性思春期遅発症、あるいはその両者の重なったような方が多いです。家族性低身長は家族が小さいために低身長になっている方です。背の伸びは悪くないのが特徴です。
体質性思春期遅発症は、思春期がくるのが遅く、伸び始めるのが遅いために他のお友達が伸びるとき(女の子では10〜12歳、男の子では12〜14歳) に低身長が目立ってきます。両者の成長曲線は図1、2に載せました。こうした方は通常、治療の対象にはなりません。
図1:家族性低身長
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図2:体質性思春期遅発症
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治療できるもののなかでは、男女ともにあり得る成長ホルモン分泌不全症、女の子にのみみられるターナー症候群の頻度が高いです。成長ホルモン分泌不全症では図3のように低身長の程度がだんだん強くなるのが特徴です。また、成長ホルモン分泌不全症の一部の方には、脳腫瘍を伴い他のホルモンの分泌不全の合併が生じます(図4) 。脳腫瘍が発生したときから急に低身長が生じるのが特徴です。
成長ホルモン分泌不全症については、我々が書いた医師向けの教科書「はじめて学ぶ小児内分泌疾患、2011年 診断と治療社、長谷川 行洋 著」から抜粋、引用しました。
頻度の高さ、治療が可能であるという観点から低身長を示す疾患の中で、最も臨床的重要性の高い疾患は、後述のTurner症候群と GH分泌不全症である。
GH分泌不全症に関しては、いくつかの分類が可能である。
に分けられる。
3の、invisible stalk syndromeは特発性に次いでかつて頻度が高かったものであるが、現在はまれとなっている、周産期障害を伴いMRIで下垂体茎が細いなどの異常を認めるGH分泌不全症に対してinvisible stalk syndromeと筆者らはよんでいる。
周産期障害(骨盤位、仮死など) 発生後1年から数年の経過で身長増加率の低下が発症する(図3) 。このような症例ではMRIにおいて下垂体茎の異常(みえない、細い) に加え、下垂体の異常 (前葉が小さい、みえない、後葉が正常より高い位置にある) を認める。
GHの分泌低下のみの場合もあるが、70〜80%以上の患者がそのほかの下垂体前葉ホルモンの分泌低下を合併する。同時に数種類のホルモンが障害される場合、GHの分泌がはじめに低下する。
後天性のGH分泌不全症は脳腫瘍、頭部放射線照射後などに発症する。脳腫瘍、放射線治療に関連して下垂体前葉機能低下症が発症する場合、ほとんどすべての症例で最終的にはGH以外の複数のホルモン欠損が生じる。こうしたホルモン欠損が生じる場合、invisible stalk syndromeと同様に、前葉ホルモンの中ではGHがはじめに欠損し、その後、そのほかの前葉ホルモンが遅れて欠損してくる。
一般的に、小児期のGH分泌不全症の診断には身長増加率の低下を認めること、および検査所見においてGHの分泌低下を認めること、の両者がそろっていることが必要である。GH以外の下垂体ホルモンの分泌不全を合併する場合はGH分泌不全症は重度であるため、診断は容易である。
遺伝子の異常以外の原因による単独分泌不全の場合、特に特発性GH分泌不全症はGH分泌不全の程度がより軽度であるため、慎重に診断する必要がある。こうした軽症のGH単独分泌不全は以下の理由から診断が困難である。
※多くはGH以外の下垂体前葉機能低下、尿崩症を伴う。
※※まれに外傷後に同様のMRI異常とともに後天的GH分泌不全(+ほかの下垂体前葉機能低下症) が生じることがある。
図3:MRIにおいて、 invisible stalkを認めたる 下垂体前葉機能低下症 |
図4:脳腫瘍 |
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以下の文章は我々の(ターナー体質の子をもつ)親の会での説明文から取っています。我々の外来でも多くの方がいらっしゃり、親の会のほか、本人の会などの活動もしております。
「はじめて学ぶ小児内分泌疾患、2011年 診断と治療社、長谷川 行洋 著」から抜粋、引用
ターナー症候群は女児2,000人に一人程度にみられる頻度の極めて多い染色体の形の違い(体質)です。ターナー症候群にみられうる症状は年齢ごとに異なります。いずれの症状も各年齢にみられる可能性がある症状であり、以下に説明した年齢ごとにすべての症状を本症女性がもつわけではありません。
新生児・乳児期においてほとんど症状を認めない方、幼児期以降において低身長以外に症状を認めない方などが存在します。診断のきっかけになることとしては、頻度として低身長が一番多いです。なお、低身長はGH治療により改善します。
症例 | 早発乳房 女児 3歳6ヶ月 |
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経過 | 6ヶ月健診で乳腺腫大を指摘され、2歳2ヶ月、小さくなる傾向がないため、紹介された。成長速度の増大(身長が急に伸びること)はなく、その後、徐々に小さくなっているので無治療で経過観察した。現在ほぼ、乳腺腫大は消えている。 「はじめて学ぶ小児内分泌疾患、2011年 診断と治療社、長谷川 行洋 著」から抜粋、引用 |
図1:早発乳房 |
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精子と卵子が受精するときには、一つの細胞ですが、そこから体のすべての部分が出来上がります。
生まれるときには男児、女児の差が生じますが、お母さんのおなかのなかでははじめは男女の差異はありません。この生まれるまでにだんだん生じる性差ができる道のりのことを性分化といいます。
この性分化の道のりは通常はどのように進むか、細かいところまで医学でわかりはじめています。数千人に一人の割合で、この道のりが通常とは異なって進みます。
こうした場合、生まれたときに外性器の形が違う(精巣が触れない、尿の出る道が通常とは違うなど)、思春期年齢になっても思春期が通常と同じように進まない(乳腺発達が生じない、生理が生じない、恥毛がはえないなど)のようなことがおきます。
こうした性分化の道のりが通常とは異なる体質をもつ方をまとめて性分化疾患といいます。性分化疾患では、多くの方とは異なる性腺、外から見た性器の形の違いなどが起こります。性分化疾患にはさまざまな種類がありますが、ここでは、一つだけ、頻度が多く、新生児早期に治療を開始する必要のあるものの代表としてCYP21A2欠損症(21水酸化酵素異常症)をあげておきました。
2万人に1人以上の比較的多い遺伝子異常であり、生後数日に血中17OHP値を用いたスクリーニングが行われています。無治療では生後2〜3週以内に副腎不全をきたす可能性があり、XXにみられる男性化の中で最も多い原疾患です。
症例 | CYP21A2遺伝子異常症(21水酸化酵素欠損症) 女児 日齢2 |
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経過 | 生後直後に陰核肥大、色素沈着を指摘され、生後2日目に当院に転院となった。 |
診察所見 | 一般状態は悪くなく、陰核肥大、陰嚢様の大陰唇を認めたが、精巣と思われる腫瘤は蝕知しなかった。 |
検査所見 |
・超音波では子宮、腟と思われる構造物を確認 ・すぐに結果が出たNa、K、血糖を含めた一般検査は異常なし ・3日後に結果が出た検査;ACTH 280 pg/mL、17OHP 77 ng/mL |
超音波検査の直後から はじめた治療 |
子宮、腟と思われる構造物を確認できたことから染色体は46,XXであることが予想でき、男性化徴候とあわせて考えて、CYP21A2遺伝子異常症(21水酸化酵素欠損症)の診断が最も考えられるため、コートリルRを80
mg/u/日、分4で開始した。3日後に診断が確定した。 「はじめて学ぶ小児内分泌疾患、診断と治療社、長谷川 行洋 著」から抜粋、引用 |
なお、我々は性分化疾患において、「フリージア」という性分化疾患に特化したチーム医療を実施しています。
フリージアは、高い水準で診療する性分化疾患センター的機能を持ち合わせているチームです。出生直後、外から見た性器が典型的でない方から、成人になられて、性のことで悩みを抱えている方まで、紹介を受けています。外科、泌尿器科、内分泌・代謝科、児童・思春期精神科、家族支援部門、看護部門で構成され、外来およびカンファレンスをしております。看護師は、性分化疾患の診療の経験が長い専門性が高いスタッフが所属しています。我々は短期的にも長期的にも、医療面、社会面、精神面まで責任をもって診ることができるチームです。成人の方は、我々の施設を通して、性分化疾患にも専門的診療を行っている成人施設にご紹介できます。
相談、共同勉強会歓迎です。
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我々は糖尿病診療においても、チーム医療を実施しています。医師、外来看護師、病棟看護師、栄養士で、入院患者、コントロールが容易でない患者の情報を密接に共有して、患者及びその家族を支えています。年一回、患者、その家族のための「きずなの会」という勉強会、講演会も行っています。