
麻酔科 部長 西部 伸一
概要
こどもたちの手術では多くの場合、全身麻酔が必要となります。また、痛みなどを伴う検査や処置でも、麻酔専門医による全身麻酔や鎮静管理が必要となります。
麻酔科では、低出生体重児・早期産児から成人まで、手術・検査における安全な全身管理を第一に診療を行っています。手術中の呼吸・循環・疼痛管理ばかりでなく、手術前の不安や術後の痛みなど、術前・術中・術後の心身のストレスを最小限にするような周術期管理を行っています。例えば、手術前の不安に対して、前投薬という気持ちを鎮めるお薬を飲んでもらうことがあります。また、手術のあともできるだけ痛みがなく快適に過ごせるように、硬膜外麻酔や各種末梢神経ブロックなどを積極的に用いて、術中術後の疼痛管理を行っています。
麻酔科は、新生児手術、先天性心疾患、小児の気道手術、腎移植などの、専門的かつ高度な医療の一端も担っています。これら難易度の高い周術期管理を円滑に行うために、各診療科医師、薬剤師、看護師、臨床工学技士などとの連携の核として機能し、多職種参加型のチーム医療を実践しています。
小児の場合、入院に伴う精神的な負担が大人よりも大きいと考えられています。当院では、安全性に配慮した一定の基準を設けた上で、日帰り手術を積極的に推進しており、外科、形成外科、耳鼻いんこう科、歯科などを対象としています。神経ブロックなども活用し、帰宅後も痛みのないように配慮しています。
また、麻酔科医と手術室看護師が専門的な立場から協力しあって、手術を受けるこどもたちの精神的な負担を最小限にする取り組みを行っています。手術室看護師が手術前に、こどもたちを訪問して手術室の説明をしたり、麻酔を始める時のマスクの香りや手術室で流れる音楽の希望を聞いたりなど、さまざまな取り組みを行っています。
診療内容
(1)麻酔管理
小児麻酔の専門医師のもと、生まれたての赤ちゃんから成人まで、手術あるいは負担の大きい処置や検査をお受けになるすべての患者さんの全身麻酔管理を行っています。また、術後の痛み治療について、麻酔科が24時間体制で対応します。
(2)日帰り手術
日帰り手術を積極的に行っており、以下の診療科・対象手術で実施しています。
外科 |
ソケイヘルニア、陰のう水腫 |
形成外科 |
副耳手術、母斑手術など |
耳鼻咽喉科 |
鼓膜チューブ挿入手術 |
歯科 |
埋伏歯抜歯、う蝕歯治療 |
(3)麻酔科外来
外来日:月曜〜金曜、時間:9:00〜16:00
全身麻酔の方法やリスクについて麻酔科医師から説明します。(手術前に外来受診していただきます)。
硬膜外麻酔や各種神経ブロックなど、全身麻酔に併用して行う麻酔方法がある場合は、詳しく説明いたします。大きな手術では、侵襲のあるモニタリングについてもお話しすることがあります。
いままでにかかった病気や現在、治療を受けている病気、飲んでいるお薬、アレルギーや普段のお子様の状態などについてお聞きし、麻酔に関する疑問やご不安にお答えいたします。
(4)ペインクリニック外来
現在、ペインクリニック外来は行なっておりません。急性期、慢性期の痛みの管理に詳しい麻酔科医も勤務していますので、お話しをお聞きになりたい場合には、まず主治医の先生にご相談ください。
(5)手術・麻酔を受ける予定のあるお子さんおよびご家族へ
手術・麻酔を安全に受けていただくために、以下のような疾患では回復までの一定の期間、手術を延期することがあります。また、病状や手術の緊急性によってはリスクを説明しご理解いただいた上で延期しない場合もあります。
該当する場合には、お手数ですが、主治医または麻酔科外来までお申し出、ご連絡ください。
(5-1)肺炎、RSウイルス感染、麻疹、風疹、水痘
治ってから(例えば通学可能になってから)手術までに4週間間隔をあける
(5-2)インフルエンザやいわゆる風邪症候群などの上気道炎
治ってから(例えば通学可能になってから)手術までに2週間間隔をあける
(5-3) 症状が発熱のみ
上気道および下気道症状がない場合には、診察の上、全身状態を判断します
(5-4) 喘息
最終発作から手術までに4週間間隔をあける
(5-5) けいれん、てんかん
最終発作から手術までに4週間間隔をあける
脳性麻痺など重度心身障害のある場合には、個別にご相談させていただきます
(5-6) ワクチン接種
術前、術後のワクチン接種については、当院感染症科のホームページをご覧いただくか、主治医もしくは麻酔科外来にお尋ねください。